みどころ

「暮らしのデザイン」のはじまり

 「アーツ・アンド・クラフツ」という言葉、聞き馴染みのない方も多いかもしれません。一言でいえば、19世紀のイギリスで始まったデザインの革新運動です。それは、人々の暮らしとデザインの関係を大きく変えた運動でした。たとえば、「よいデザインのものは、美しいだけでなく使いやすい」ということは今では当たり前ですが、この考え方のもとにもアーツ・アンド・クラフツがあります。
 運動の始まりをたどると、ウィリアム・モリスが新婚の頃に建てた家レッド・ハウスに行き着きます。心地よく暮らせる美しい家にしようと、モリス自身が友人たちと力を合わせ壁紙や窓ガラスの装飾を手作りした家です。モリスは「世界でいちばん美しい家」と呼びました。
 そんなささやかな手仕事からはじまったアーツ・アンド・クラフツの精神は、やがてヨーロッパ中に、さらに日本やアメリカにまで広がりました。展覧会では、イギリスを中心に、アメリカでの動向も加え、アーツ・アンド・クラフツの展開をご覧いただきます。

みどころ1モリスの代表作が勢揃い!

モリスにとって「暮らしのデザイン」のスタートとなった壁紙のひとつが《格子垣》。レッド・ハウスの庭のバラの生垣をデザインのヒントにしたものです。そして、インディゴ染めの代表作《いちご泥棒》や《メドウェイ》など室内装飾の名作、さらに、モリスが晩年に全身全霊をかけて取り組んだブックデザインまで、全20点でモリスの世界を紹介します。

ウィリアム・モリス
いちご泥棒(室内用ファブリック)
1883年

ウィリアム・モリス
メドウェイ(室内用ファブリック)
1885年

ウィリアム・モリス
格子垣(壁紙)
1864年

ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ著
(デザインはウィリアム・モリス)『ソネットと抒情詩』
1893年

みどころ2アーツ・アンド・クラフツ運動の発展のキーパーソンの5人

アーツ・アンド・クラフツ運動の発展に重要な役割を果たした5人の人物がいます。装飾家のルイス・フォーマン・デイ、画家でもあったクレイン、建築家のヴォイジー、モリスの没後モリス商会の後継者にもなったベンソン、そして手仕事を大切にしたアシュビーです。モリスのデザインや思想をそれぞれに受け継ぎ、自身の考えを重ねて展開しました。壁紙やランプから食器まで、さまざまなデザインをご覧いただきます。

チャールズ・フランシス・アンズリー・ヴォイジー
小鳥と花「エセックスNo. A. 14」(壁紙)
1907年頃

ウォルター・クレイン
ミュージック(室内パネル)
1870年

ウィリアム・モリス
メドウェイ(室内用ファブリック)
1885年

チャールズ・ロバート・アシュビー
蓋付きマフィン銀皿
1900年頃

みどころ3プリントで有名なリバティ商会のプリント以外の作品も!

「リバティ・プリント」の名で、日本でもとても人気のあるリバティ商会のプリント。もともとリバティ商会は東洋の美術品や絹の輸入販売する店でしたが、やがて家具や生地も制作するようになります。モリス商会のライバルでもあり、理想を同じくする同志でもあったリバティ商会もアーツ・アンド・クラフツを語る上では欠かせません。展覧会ではプリント以外の品々もご覧いただきます。

ジェームズ・クロマー・ワット
ホワイトメタルのエナメルペンダント
1920年頃 リバティ商会

リバティ・テキスタイル
リバティ商会

アーチボールド・ノックス
ピューターとエナメルの3点組ティーセット
1900年頃 リバティ商会

アーチボールド・ノックス
銀とエナメルのブローチ
1903年 リバティ商会

みどころ4アメリカで独自の発展をとげた
アーツ・アンド・クラフツの世界を紹介

すぐにアメリカにまで広がったアーツ・アンド・クラフツ運動。新大陸アメリカでは、イギリスやヨーロッパとは少し違った展開をしました。高級宝石商としても知られるティファニーが多くの人々の手に届くように量産したランプ、建築家フランク・ロイド・ライトが手がけたステンドグラスもご覧いただきます。

三輪のリリィの金色ランプ
1901-25年 ティファニー・スタジオ

卓上ピクチャーフレーム
ティファニー・スタジオ

ブドウのつるに覆われたインク壺
ティファニー・スタジオ

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