2024年9月21日[土]−12月1日[日]

みどころ

版画と油彩画──
ふたつの世界を見渡す

 草花に彩られた女神のような女性と波打つ曲線。19世紀末パリの香りが色濃く漂うアルフォンス・ミュシャの版画は、多くの人の心をつかんできました。さらに、近年、注目の高まるミュシャの油彩画。神秘的で荘厳な画面は、複雑な歴史を持つ祖国に生きたミュシャの画家としての奥深さを物語り、見る者を魅了します。
 ミュシャの版画と油彩画は、これまで両者を一つの視点から眺め渡す機会がほとんどなかったために、まるで別世界のもののように語られてきました。しかしながら、固定観念を取り払い、ひとつひとつの作品に向き合えば、色やかたち、構図の作り方など、絵づくりの要素には、共通点が多いことに気づきます。甘美で流れるような曲線や、その中に確かにある、揺るぎない重厚なデッサンと構成力──版画にも油彩画にも、一目でミュシャと分かる強い個性が、その造形にあふれているのです。
 本展では、版画の代表作と貴重な大型の油彩画、さらに素描や下絵も合わせて、ミュシャの魅力を余すところなく紹介します。なお、他の館への巡回はありません。是非、この機会にお見逃しなくご覧下さい。

みどころ1クラシックな絵画と最新のデザイン感覚

ミュシャのポスターは、格調の高い伝統絵画の要素に、最新のデザイン感覚を組み合わせた斬新さから、人々の心を捉えました。例えば、人物には的確に陰影を施して立体的に描き、それ以外のモチーフは分かりやすく、平面的にデザイン化しています。さらに人物を太い輪郭線で囲むことで、全体の調和を図っているのです。版画作品の代表作が揃う本展で、そんな「ミュシャらしさ」をお楽しみください。

《夢想》
紙、リトグラフ OGATAコレクション

《ダンス》
紙、リトグラフ 堺 アルフォンス・ミュシャ館(大阪府堺市)

みどころ2心の世界を見つめる思想

象徴主義は、文学から音楽や美術まで、世紀末のヨーロッパの芸術すべてを包み込むように流行した芸術運動で、表現のあり方そのものを問う革新性がありました。象徴主義の好例として知られるミュシャの神秘的な油彩画、さらには軽やかな版画作品にまでを、この思想を軸に見つめます。

《ポエジー》
キャンバス、油彩 堺 アルフォンス・ミュシャ館(大阪府堺市)

《モンテカルロ》
紙、リトグラフ サントリーポスターコレクション(大阪中之島美術館寄託)

みどころ3創作の過程に迫る

ミュシャの造形の魅力を解き明かすものとして欠かせないのが、下絵です。デッサンを重ね、試行錯誤を繰り返しながら「ミュシャらしさ」を生み出していきました。完成作とも比較しながら、ご覧いただきます。

《黄道十二宮》
下絵 紙、墨 堺 アルフォンス・ミュシャ館(大阪府堺市)

《黄道十二宮》
紙、リトグラフ 株式会社インテック(富山県美術館寄託)

みどころ4ミュシャの原点 物語の挿絵 貴重な下絵も公開!

ミュシャが初めて手がけた絵の仕事は、本の挿絵でした。画学生時代に奨学金が打ち切られ、いわば生活のために始めたものでしたが、ミュシャはこの経験を自分の大切な原点と語り、挿絵の仕事を生涯、続けました。初期の代表作を、貴重な下絵と合わせて紹介します。

『白い象の伝説』
下絵 紙、インク、水彩 堺 アルフォンス・ミュシャ館(大阪府堺市)

『白い象の伝説』
紙、リトグラフ OGATAコレクション

みどころ5世界的コレクションの名品

ミュシャ人気の高い日本には、質の高いコレクションが数多くあります。特に、ミュシャの実息との深い信頼関係によって築かれたドイ・コレクションは世界的なコレクションで、《ハーモニー》、《クオ・ヴァディス》といった大型の油彩画が含まれています。同コレクションが寄贈された堺市以外では公開機会のほとんどない、この貴重な2点も展示します。

《クオ・ヴァディス》
キャンバス、油彩 堺 アルフォンス・ミュシャ館(大阪府堺市)

《ハーモニー》
キャンバス、油彩 堺 アルフォンス・ミュシャ館(大阪府堺市)

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