「ふつう展」日記

ひとつの展覧会の裏側には、展覧会を訪れただけでは見えない、さまざまなプロセスと試行錯誤があります。「ふつう展」日記は、「ふつうの系譜 「奇想」があるなら「ふつう」もあります 京の絵画と敦賀コレクション」展、略して「ふつう展」に関わるスタッフが、折々に皆さんにお伝えしたいことを発信するブログです。


開館20周年記念展は、秋の江戸絵画まつり!

現在、春の江戸絵画まつり「与謝蕪村『ぎこちない』を芸術にした画家」展が開催中です。美術館のある公園の桜も見頃を迎え、お花見がてら、蕪村展に足を運んでくださる方も増えているようです。

 

この蕪村展の展示室の出口に、今秋の「動物の絵 日本とヨーロッパ ふしぎ・かわいい・へそまがり」展のポスターを設置しました。「春の江戸絵画まつり」によくお越しくださる方々の中には、「あれ、今年は秋も江戸絵画まつり?」と思われた、鋭い方もいらっしゃるかもしれません。

そうなのです。今年は秋も「江戸絵画」。今度の「動物の絵」展は、「春の江戸絵画まつり」シリーズなしには成り立たない展覧会なのです。今年で17回目を迎えた「春の江戸絵画まつり」シリーズでは、「動物絵画の100年」(2009年)と「動物絵画の250年」(2015年)と、これまでに2度、動物をテーマとした展覧会を開催しました。とくに、動物と人の心の関係にも注目した「動物絵画の250年」展の際に、これほど豊かに動物の絵を生み出した江戸時代は、世界的にもめずらしい動物絵画の宝庫ではないだろうかと思い始めました。これが、日本とヨーロッパの動物絵画を同時に眺める「動物の絵 日本とヨーロッパ ふしぎ・かわいい・へそまがり」展の出発点です。

サブタイトルは「ふしぎ・かわいい・へそまがり」としました。お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、「かわいい」と「へそまがり」は、「かわいい江戸絵画」展(2013年)と「へそまがり日本美術」展(2019年)からとりました。江戸時代にかわいい作品が多く生み出されたこと、あるいは、きれいで立派なもの以外に心ひかれるへそまがりな感性が生んだ作品が日本で古くから愛されてきたこと、どちらも現在まで続く日本美術の大きな特徴です。日本の動物絵画を、ヨーロッパの作品とも比べようとする今回の展覧会にも、こうした視点を取り入れたいと考え、サブタイトルとしました。また、これまでの動物展のどちらでも、人が動物に感じる「神秘」に注目しています。今回もこの視点は欠かせないと考え、「ふしぎ」という言葉も加えました。

そして、この展覧会は府中市美術館の開館20周年展でもあります。春の江戸絵画まつりシリーズと、この20年間、主に秋に開催してきた西洋絵画の展覧会。20年の歩みを振り返るひとつの試みとして、そのふたつがタッグを組んで「動物の絵 日本とヨーロッパ ふしぎ・かわいい・へそまがり」展をお届けしたいと思います。

 

西洋絵画、日本の近代絵画、江戸時代以前の絵画も展示されますが、中心となるのは江戸時代の動物絵画です。「秋の江戸絵画まつり」として、楽しく、そして充実した内容の展覧会を開催できるよう準備を進めています。今後、準備の様子も「動物展日記」で発信していきますので、どうぞお楽しみに!

(府中市美術館、音)

 

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