「ふつう展」日記

ひとつの展覧会の裏側には、展覧会を訪れただけでは見えない、さまざまなプロセスと試行錯誤があります。「ふつう展」日記は、「ふつうの系譜 「奇想」があるなら「ふつう」もあります 京の絵画と敦賀コレクション」展、略して「ふつう展」に関わるスタッフが、折々に皆さんにお伝えしたいことを発信するブログです。


色校会議と、PD高栁さんのこと

すっかり、動物展日記をさぼってしまいました。

 

正確に言いますと、決してさぼっていたわけではなく、あまりに色々なことが、ぎゅぎゅっとタイトに詰まっていて、ちゃんとした日記を書くだけの余裕がなかったのです。でも、そんなことを言っていては、一生日記なんか書けない、と思い直して、「展覧会にまつわることを、少しでも」という気楽な気持ちで、リスタートすることにしました。

 

今日は、先日、Twitterでも少しお知らせしました、色校会議のことをお伝えしたいと思います。

 

印刷は、府中市美術館の図録は、写真集や美術書などの印刷に定評のある東京印書館さんです。「リアル 最大の奇抜」「へそまがり日本美術」「ふつうの系譜」などでもお世話になりました。

 

印刷の全体を統括してくださるのは、高栁昇さんというPD(プリンティング・ディレクター)さんなのですが、もう、高栁さんが本当にすごいのです。

▲「全体の方向性からいくと、ここはもう少しディテールを出した方がいいように思います」と、こちらが指摘しなかった点にも、気づいてくれる高栁さん。

 

「なんか、こうもうちょっとさらっとした絵で〜」とか「もうちょっときれいなんですよねえ」とか、編集サイドがめちゃくちゃ曖昧な感じで印象を言うと、「なるほど!」とおっしゃり、「山口くん(オペレーションをしてくださる方)、ここHP(エイチピー?よく聞き取れない・・)、マイナス3パー行ってみよう!」とか、私には謎の指示をバンバン、テキパキ出して、あっという間に、こちらが思った通りの写真に仕上げてしまうのです。もうそれは、本当に「マジック」みたいです。

▲犬づくしページ。編集が赤字で入れた指示を、高栁さんが青字で印刷用語に翻訳してくれます。私には全然読めませんが、現場の方たちはちゃんと解読して、どんどん手を動かしていきます。

 

 

▲高栁さんは、いつもダブルのスーツに、ハンカチ、ブローチを欠かさないダンティな装いです。この日は、マスクもおしゃれ。古いネクタイを奥様がマスクに仕立ててくれたのだそうです。素敵すぎます。

 

▲「ここ、赤が●パーセント入ってます」とルーペ でのぞいて、数値化しちゃいます。

 

▲潾二郎の猫。絨毯の赤が実物はワインレッドに近いのですが、写真ではそれが出ていなかったので、調整してもらうことに。「猫はキープ」の高栁さんの指示が、なんだかかわいいです。

 

高栁さんは、森山大道さん、本橋成一さん、石元泰博さんはじめ錚々たる顔ぶれの写真家の方々からの信頼厚い、凄腕PDさんとして有名な方で、初めてお目にかかる時は、実はめちゃくちゃ緊張したのです。でも、1点1点、丁寧にこちらの意見を聞いて、こちらが求めているのはどんなことなのかを粘り強く探ってくださるその姿を目の当たりにして、素晴らしいお仕事をなさる方はすごいなあ、と感激したのでした。百戦錬磨なのに、勘だけに頼らないんですね。勘も抜群にさえてらっしゃるのに。今回も、相変わらずの高栁さんで、図録制作チーム一同、なんだかやる気を倍増させて、帰路につきました。

 

実は高栁さん、先日NHKの「サラメシ」に出演なさったのですが、その時、夢でも色校をしていたエピソードを披露して、「私は24時間ONです!」とお話ししていました。「それ夢じゃん!」って思った方もいらっしゃるかもしれませんが、実際に高栁さんを知っている私からすると、さもありなん、という感じなのです。高栁さんなら、寝てても色校をしているだろうなあ、と。

 

「引退して、印刷のことを考えないで、気楽に美術展や写真展を見るのが夢です」なんておっしゃっていましたが、どうか、引退しないで現場に立ち続けて欲しいものです。

 

というわけで、動物展の図録、今回も100%の自信を持って、皆さんにお届けできる仕上がりになりそうです!お楽しみに!

(図録制作チーム、久保)

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