秋の撮影から始まった図録が、校了を迎えました。
前回の日記でも書いたとおり、今回はほぼ全ての写真が撮り下ろしで、いい状態の画像を入稿することができました。さらに、東京印書館のプリンティング・ディレクターの高柳さんは、もう本当に、百戦錬磨の超すごい人な上に、作品の撮影にも立ち会ってくださいました。
▲撮影時に高柳さんがとったメモ。「Greenの色調差あり」とか、「雲部分は金泥ある」とか、画像だけでは見極めが難しそうなことが、書かれています。
というわけで、初校の段階からとてもいい仕上がり。それでも、地色の色調が赤っぽく出てしまったり、墨色がきちんと出なかったりと、江戸絵画ならではの難しさはやはりあって、微妙な調整が必要でした。美術本を作る時、いつも色校正の段階で、とっても悩みます。この色、なんか違うんだけど、どうやって指示を入れたら、思う通りに印刷所が直してくれるのかしら、と。
ですが、今回のFace to Faceの色校では、編集サイドの言葉にしきれない意向を高柳さんがどんどん汲み取ってくださるので、「ああ、こうやって印刷の言語に変換していくんだなあ」と、とても勉強になりました!
▲色初校紙。私の指示は赤字。それを高柳さんが青字で印刷用語に「翻訳」してくれます。高柳さんはなかなかの達筆で、まるで呪文のようですが、現場の方はきちんと解読できます。
▲色初校時の打ち合わせ。「うずらがもっと、存在感あるんですよね」というような印象を伝えると、そのように印刷の方向を持って行ってくれます。
このようなやりとりを経て、先日、ついに校了! 印刷が始まるということで、東京印書館の工場に、印刷の立ち会いに行ってきました!
印刷立ち会いとは、印刷の現場に行って、最終的に色などを確認して、OKを出すことです。
▲再校戻し時の赤字がきちんと反映されているかどうか、確認していきます。
▲版を見ながら、印刷機の前で最終調整をしてくれます。手前のつまみで、インクの濃度が調節ができます。この時は、手前の伝又兵衛の作品の墨を少しだけボリュームアップ。
▲墨のボリュームを調整後の刷りでは、伝又兵衛、ぴしっと締まった印象になりました。金子学芸員が「責了」の意味のサインをします。
▲印刷機の周りはこんな感じ。高柳さんが校了紙をチェックして、微調整。OKが出ると、後ろの印刷機で、じゃんじゃか刷られていきます。
▲工場の天井部分には、パイプラインが走っていて、インクが印刷機へと送られています。
▲パイプラインをたどっていくと、こんなに大きなインクのタンクが! 基本の4色が入った220リットルの大きな缶です。
こうして、無事、印刷立ち会い(と工場見学)も終わりました。もう、色については思い残すことのないくらい、満足な仕上がりです。
これを書いている今頃もう、全部刷り終わって製本中。今回は仮フランス装という素敵な造本なのですが、そのことはまた後日、詳しく書きたいと思います。
(図録制作チーム、久保)