「動物展」日記

ひとつの展覧会の裏側には、展覧会を訪れただけでは見えない、さまざまなプロセスと試行錯誤があります。「動物展」日記は、「動物の絵 日本とヨーロッパ」展、略して「動物展」に関わるスタッフが、折々に皆さんにお伝えしたいことを発信するブログです。


家光の木兎図のこと①ー初公開にまつわる色々ー

9月18日(土)にスタートする、「動物の絵 日本とヨーロッパ ふしぎ・かわいい・へそまがり」展、先日、その図録をようやく校了いたしました。

 

府中市美術館開館20周年記念というだけあって、今回の展覧会、本当に豪華です。日本とヨーロッパ各地から、計183点もの作品が集められます。

 

今日は数ある作品の中から、府中市美術館ととりわけゆかりの深い、この家光の「木兎図」のことを、お話ししたいと思います。

▲徳川家光「木兎図」(部分、養源寺蔵)。

 

大きな耳(羽角といいます)に、まん丸の目、もふもふの体。この「木兎図」は、2019年の「へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで」(以下、へそ展)の準備中に、府中市美術館の金子学芸員が確認して、初めて一般公開された作品なのです。

 

この作品を所蔵するのは、東京・千駄木にある養源寺。徳川家光の乳母として知られる春日局の子、稲葉正勝創建のお寺です。

▲東京・千駄木にある養源寺。

 

春日局ゆかりの寺に、家光の作品が伝わる、というのは誰もが納得のいくストーリーなのですが、2019年まで「木兎図」のことは、公には知られていなかったのです。それをどうして、へそ展に出品することになったのでしょうか? 実は、そこに一役買ってくださったのは、京都・麟祥院の御住職でした。

▲へそ展の準備中、作品撮影に訪れた京都・麟祥院にて。

 

へそ展出品の雲竜図襖の撮影に伺った際、へそ展に徳川家光の作品が出品されることを知った御住職は、「家光の面白い絵なら、東京の養源寺にあるよ」と、教えてくださったのです。

▲撮影した家光の作品を見せてくださる麟祥院の御住職。

 

麟祥院の御住職は、美術にも造詣が深いので、一度目にした作品はよく覚えていらっしゃるのでしょう。おもむろに携帯電話を取り出して、ご自身で撮影された作品の写真を見せてくださり、なんと、その場で養源寺の御住職にお電話までしてくださいました。麟祥院と養源寺は、同じ臨済宗妙心寺派の寺院なので、皆さんお互いによく知ってらっしゃるのです。

 

そして金子学芸員は後日、養源寺を訪ねて、実際の作品を見せていただき、へそ展で公開されることになったというわけです。麟祥院の撮影に同行していた図録制作チーム一同、展覧会の出品作が、こんな風に決まることもある、ということを目の当たりにする、という大変貴重な機会でした。何事も、人と人とのつながりが大事なんだなあ、としみじみ思いました。

 

そんなわけで、府中市美術館との特別な縁を感じてしまう「木兎図」ですが、今回、動物展への展示を前に、修復に出されるということで、その様子を取材させていただくことができました! 修復の様子は、次回の日記でお伝えしたいと思います!

(図録制作チーム、久保)

 

 

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