会期中に無念の閉幕となってしまった『ふつう展』。ワタクシ街歩き担当(?)も写真で参加しておりましたので、本当に残念です。
それでも、作品が敦賀にある限り、お目にかかる機会は必ずやってくるはず。そう信じてます。そして、作品だけでなく、敦賀という街の魅力も皆さまにご案内したいーー。
そんな思いで、『へそ展』でもお送りした番外編、「街歩き」ネタを書いてみます。
外出自粛で旅を渇望していらっしゃる皆様のために、路上観察趣味の私が見た敦賀をお届けします。
私が敦賀を訪れたのは、図録の編集作業が佳境に差し掛かる前の昨年12月、東京から日帰りという強行軍でした。限られた時間で主題である博物館取材をし、日本海の海の幸を食べて帰らなくてはなりませんでした(←こういうことをしているから時間が足りなくなるのですが)ので、その魅力のごくごく一部にしか触れることができなかったことを、最初にお断りしておきます。
そんな短時間でも、敦賀の街にはたくさんの見所がありました。歴史好き、建築好き、路上観察好き……皆様の様々な趣味を満足させてくれると断言できます。
ということで、「敦賀を歩く」シリーズ第1回のテーマは、「敦賀で鉄分を補給する」です。そう、敦賀は日本の鉄道史上重要な「鉄道の町」で、散策でも存分に「鉄分」を補給することができます。
敦賀を訪れたのは2019年12月19日。北陸日本海側の寒さを覚悟して降り立ちましたが、この日はそれほど寒くなく、散策日和でした。
まずはタクシーで史跡「金ヶ崎城址」にある神社、金崎宮を目指していますと車中から、ガードレールで分断された線路、つまり廃線跡が見えます。
タクシーを降り立つと駐車場の隅にひっそりと煉瓦造りの小さな建物があるのに気づきます。国内最古の鉄道建築物のひとつ、「旧敦賀港駅ランプ小屋」です。
そう、敦賀の鉄道の歴史は古く、日本の鉄道開通から10年後の1882年には敦賀港駅(当時は金ヶ崎駅)ー洞々口間(仮駅)で鉄道が運行されます。先ほどの廃線跡は旧敦賀港駅を終点とした敦賀港線で、このランプ小屋は敦賀港駅開業当初から残る鉄道遺産というわけです。
ランプ小屋はその名の通り、当時の鉄道に使われていた灯火の燃料を保管する場所。2015年に修復復元が行われ、現在はその内部も含めて公開されています。
敦賀港駅はウラジオストク航路と接続する欧亜国際連絡列車の拠点でした。列車で東京の新橋駅から金ヶ崎(敦賀港)駅まで。そしてそこから海路をウラジオストクへ渡り、シベリア鉄道に乗り継ぐ。大河ドラマ「いだてん」をご記憶の方も多いと思いますが。金栗四三たちもこのルートで、日本人初のオリンピック選手として、日本を出発したのです。
第二次大戦で航路が廃止になったことから、敦賀港線の旅客運輸は休止、1940年以降は貨物専用線(北陸本線貨物支線)となります。その貨物線も2006年に休止となり、その後敦賀港駅はORS(オフレールステーション。トラック輸送でコンテナを扱う貨物駅)となったため、線路は使われなくなったのです。
敦賀の鉄道の歴史については、旧敦賀港駅駅舎を模して造られた「敦賀鉄道資料館」で展示される様々な資料で深く知ることができます。
そういった敦賀の鉄道史を一通りお勉強したら、ぜひ訪れていただきたいのが、「敦賀赤レンガ倉庫」です。国の登録有形文化財である「旧紐育スタンダード石油会社倉庫」を利用した商業施設ですが、ここにある巨大ジオラマでさらなる鉄分を補給しましょう。鉄道資料館からは徒歩数分です。
レストラン&ショップとオープンガーデン、ジオラマ館からなる施設ですがとにかく、このジオラマ館に入ってください。観光施設によくあるジオラマを想像して入館すると、これがすごかったのです。
赤レンガ倉庫のwebサイトに制作過程が公開されていますが、いろいろと執念を感じる、いつまで眺めていても飽きないジオラマです。
昭和20年当時の復元地図をもとに、敦賀の街並み1/80スケールで制作されており、ここで敦賀の鉄道が俯瞰できるのです。
そしてこの鉄道模型、ただ動くだけでなく、マスコンを使って運転することができます。しかも、新疋田ー敦賀間に実際ある「ループ線」区間です。
鉄道が急勾配を克服するために造られるループ線。新疋田ー敦賀間のループ線は多くがトンネル区間のため「姿なきループ線」として知られています。敦賀から新疋田へ向かう際、敦賀を背にして進んでいたはずが、トンネルを出ると再び敦賀の街が見える……という不思議な体験をする、アレです。
このジオラマでは、キハ52の模型でこのループ線運転を体験できるのです。
とにかくこのジオラマ、規模といい、細部への作り込みといい、そして模型を動かせたりと、時間を忘れて楽しめます。
ランプ小屋をスタートして、敦賀鉄道資料館、赤レンガ倉庫と散策には1時間ほどでしょうか。「鉄道の町」敦賀をコンパクトに堪能できる散策コース、オススメです。
(図録制作チーム、藤枝)