「ふつう展」日記

ひとつの展覧会の裏側には、展覧会を訪れただけでは見えない、さまざまなプロセスと試行錯誤があります。「ふつう展」日記は、「ふつうの系譜 「奇想」があるなら「ふつう」もあります 京の絵画と敦賀コレクション」展、略して「ふつう展」に関わるスタッフが、折々に皆さんにお伝えしたいことを発信するブログです。


床の間ってすごい! 掛軸撮影@京都・無鄰菴①

「へそまがりな絵」が、実際に暮らしの中にあったら、どんな雰囲気なのか──
昔の人たちの気持ちを少しでも想像することができたら、と考えて、掛軸を床の間に飾った写真を撮影し、「へそ展」の図録に掲載することにしました。
撮影の場所は、京都、南禅寺近くにある名勝・無鄰菴です。

先日、古書画屋さんで見せていただいて、出品が決まった長沢蘆雪の《猿猴弄柿図》。とてもアクの強い顔の猿なのですが、床の間にはすっと馴染みます。そして、なんとも品のある作品だということがわかりました。床の間の包容力、すごいです!

サイズを測るのも大事な仕事。

たくさん並んだ箱の中から、次に撮影する作品を、古書画屋さんに出していただきます。

   

無鄰菴は明治・大正時代の政治家山縣有朋の別荘でした。母屋・洋館・茶室の三つの建物と庭園から構成されていますが、何より素晴らしいのは、東山を借景に広がる庭園。ごく浅い水流がサラサラと流れているのが、とっても綺麗なのですが、これを保つため、日々、庭師の方々が手を入れているそうです。南禅寺界隈の別荘群では唯一、通年で公開されている庭園なので、今度はゆっくりと、訪ねて見たいと思いました!
(講談社図録制作チーム、久保)

蘆雪の「へそまがり猿」@京都の老舗・古書画屋さん

出品作品が決まるまで、担当の学芸員は「へそまがり日本美術」にふさわしい作品を探して、作品調査の旅を繰り返します。旅先は日本各地の美術館・博物館であったり、個人のご所蔵家であったり、さまざまです。
この日は、京都の老舗の古書画屋さんへ。なんと、ご主人が最近見つけたばかりの長沢蘆雪の《猿猴弄柿図》をいち早く、見せていただきました!
(講談社図録制作チーム、久保)

   

真っ赤な顔、黄色い目、コウモリのような耳……。「かわいさ」とは無縁のその姿に蘆雪の「へそまがりな感性」が感じられます。


江戸絵画には必ずしも、もともと名前があるわけではないので、初めて作品が出てきた場合、展覧会出品に際して、どんな名称にするのか悩みます。今回は、箱にかつての所蔵家がつけたラベルが貼ってあったので、そこから《猿猴弄柿図》の名を引き継ぎました。

 

 

一癖も二癖もありそうな顔立ちの猿。「へそまがり日本美術」にぴったりです。

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